無縫冠はなんてすばらしかったんだろう~無意味な解析だけど

電応研テクニカルレポートVol.9(2000年)とVol.12(2002年)「歯 の 長 寿 命 化 の た め の 力 学 的 研 究」によれば、下顎の45だけを用いてシミュレーションしていたが、両側から横に圧力を掛けて、有限要素法で解析すると、コンタクトポイントの接触部表面から僅かに内部に入った部位に応力集中が見られ、歯頚部にも応力が集中することが示された。
これらの応力は通常の咀嚼時の加重では、問題がない値だったという。やはり、歯ぎしり食いしばりの力が主に作用しているのではないかという結論を出していたように覚えている。
しかし、この結論は少しおかしい。「むし歯と力 うわの空の解析」(2012/11/20)でインプラントの例を出したように、歯ぎしりでは全部の歯に同じ方向の力が働くから、インプラントとかブリッジや連結した歯、埋伏智歯と接しているような歯じゃないと、その歯だけに応力が集中することは無いはずで、条件が限られてくる。
あごろべえ先生が発見したスウィング干渉は、その年にはまだ影も形も無かったから、そのような結論になったのだろう。
スウィング現象の視点からむし歯を見ると、その歯のここにむし歯が出来た理由がよりはっきりと解析できる。

しかし、それはひとまず置いて、あらゆる方向から有害な力が掛かりうるわけだから、その力による虫歯を予防することを考えると、金冠は最も優れた方法だったのではないだろうか?
現在の冠は金属にせよセラミックにせよ、精密に合わせるために歯を台形に削って型を採り作る。
そうしないで逆台形の歯に被せようとしても、入るわけがない。だから、台形に削るわけだが、歯はウエストがくびれた逆台形の形をしているから、歯の表面のエナメル質を全て削ってしまうことになる。
現在の治療法が寿命が短いのはそのせいで、硬くて酸に強いエナメル質が無くて、柔らかくて酸に弱い象牙質に被せるから継ぎ目の辺りからむし歯になると言われている。
しかし、それは、力によるむし歯が考慮されていない。接着剤が良くなった現在では力によるむし歯こそが主体になるはずだ。

無縫冠は、歯の先端と隣接面を少し削るだけで、基本的にはエナメル質はほとんど残っている。
それで、逆台形の歯にどうして被せられるのかというと、茶筒形の金の板を板金加工して歯の形にしてスポッと被せるわけだ。
円筒形だから、冠のふちの辺りはタイトスカートをはいたみたいに足=歯頚部との間がすいている。そのすいているところは当時の唯一の合着材のリン酸亜鉛セメントで埋まっているわけだ。
何年も経つと、そのすき間を埋めていたセメントは溶けて無くなっていて、探針がスポッと入るほど空いている。
だから、バケツを被せたようなものだと、バケツ冠という蔑称があった。
しかし、そんなに空いていても虫歯になっていないことがほとんどだった。

電応研テクニカルレポートの解析を当てはめて考えると、2大応力集中箇所の一つのコンタクトポイントの少し内側は冠とエナメル質の境になるし、歯頚部に加わる力も、冠と歯との間のセメント層になるのではないか?
隙間が空いてくるのはセメントが唾液で溶解するばかりじゃなくて応力によって破壊されたのかもしれない。
つまり、無縫冠を被せると、有害な応力は歯ではなくて冠と歯の間で吸収されてしまうように思える。
全く都合がいいことに、高くてぶつかる所は柔らかく延性がある金なので、つぶれてへこんだり穴が開いて調節される。
このように、穴が開いたりセメントが無くなって隙間が空いたりすると、ますます上手く力を逃すようになるのではないか?
だから、非常に不潔域が増えるはずなのに、垂直性の骨吸収はむしろ少ない傾向があったのもそのせいではないかと思う。

しかし、ウズベキスタンのおばちゃんみたいに獅子舞のように金冠を入れて喜ぶ人はいまの日本にはいないだろうから、全く意味のない解析をしてしまったことになるけど。




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歯の問題 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/06/30 00:00
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