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たった一本の歯が・・・

>一発で、若々しい顔で、首や肩がこらない、よく咬める総入れ歯を作ることが出来る。
僕は、それがほぼ確実に出来るようになった。
歯医者になって35年が過ぎてからようやくだけれども、総義歯の権威と言われている人たちにも出来ないことだ。
えへん!

前回、尊大にもこのような途方もない自慢をした。
お前!この前入れ歯で失敗して、悔しいと泣いていたのは誰だ!という声が、耳元でガンガン響く。
もっともだ。それについて、釈明したい。
朝日新聞みたいに、ねつ造したわけでもないし、失敗症例をごまかすようなこともしないつもりだ。

恥をかいた二人の患者さんを、翌週以降何とか治すことが出来た。
それは、一本だけ残っていた歯を軽く見た失敗だった。
歯の歯根膜の力は恐るべきものだということを、思い知らされた。

なぜひどい失敗をしたのかを考えてみると、この二人ともあちこち虫歯に被せたり抜いたりして、とりあえず入れ歯を入れてメンテナンスしている患者さんだった。
つまり、あまりにもあちこち壊れていたので、まず第一段階としてそのままの顎位で修復して、それをメンテナンスしていて、その中の歯が1本ダメになって作り直すことになった。

患者さんが怒って帰ってしまったのは、1本残っていた歯にあわせた低い状態で入れ歯の高さが規制されていたのを、より良い高さに変更して入れた結果だ。
もう一人の患者さんは、下顎に1本だけ残っていた右下4番を抜いて入れ歯に歯を足した後、入れ歯があちこち当たってきてなかなか解決しなくなった。
ああだこうだ何回も調整してはまだ痛いとなって、これではだめだと観念して総入れ歯のように生理重力下顎位に誘導してみると、なんと3mmも左後ろに顎位が移動した。
その残っていた右下4番の歯は、上顎の入れ歯と咬んでいるだけだった。その歯を抜く前に型を採って全く同じ形で足したのだけれども、全然ダメだった。
下顎のたった一本の歯が顎位を保っていた。その歯が憶えていたので、無くなるととたんに混乱してしまったわけだ。

たぶん、初診で来て新しく入れ歯を作ったならば、失敗は無かったと思う。全てを疑ってかかるから。
これまで1~2年なんでもなかったので、うっかりしてしまった。

これで分かったのは、下顎の歯が顎位を保持するということ。
たった一本の歯が、他に規制しているかみ合わせも無いのに3mmも違う位置に顎位を保ち続ける力があるということだ。

それで分かったので、最初のかみ合わせを上げて1本残っている犬歯が届かなくなった患者さんは、その歯をかぶせ直して届くように直した。
生理重力下顎位方向にもかみ合わせを直した。

合わなくてあごが傷だらけになって痛いので寝るときについ外してしまったら、肩こりと頭痛・首痛でとんでもない目にあった。と患者さんはぼやいていた。
歯科医師会で文例を作った入れ歯の患者指導は、外して寝るように書いてある。
僕は、入れて寝るように直したものを作って渡しているが、このような指導は僕と仲間ぐらいなものだ。
とんでもない数の患者さんが、就寝時に外す指導と入れ歯洗浄剤のCMのせいで苦しんでいるはずだ。
特に、このように上下の自分の歯が1本だけ咬んでいるようなときには悲惨なことになる。申し訳なかった。
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入れ歯とのくらし | コメント(0) | トラックバック(0) | 2014/10/29 00:00
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