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三つ子の魂百までも ー嚥下癖ー

育児書原性、保健指導原性の要素が強い悪習癖 嚥下癖 について、3年ほど前に僕の所属する歯科医師会の広報誌に記事を書いたことがある。
でも、あまり一般受けしないのではないか?ということになって没になった。
母親向けに書いたものなので、解りやすいはずだ。それを載せてみる。


三つ子の魂、百までも。
    -「嚥下癖(えんげへき)」をご存知ですか?―


 皆さんは、ごく普通に食事をして、また、水やお茶を飲んでいます。それについて特に考えたこともなく、誰でも同じようにそうしていると思っているはずです。
しかし実は、上手下手があるのです。嚥下癖とは、飲み込むときの良くない癖のことです。
一言でいうと、食べ物や、水や、自分の唾を飲み込む時に舌の使い方を間違えて覚えてしまった状態なのです。
しかも現在では4割の人に多少なりとも嚥下癖があるといわれています。若年者ではもっと多いでしょう。
 
 それでは、「嚥下癖」でなにが起きるのか。その見分け方、原因を順にお伝えします。
年々増えている、歯列不正の最大の原因です。
硬いものを食べなくなったから。食卓に水を置いて流し込んで食べているから。
いろいろ原因が取りざたされていますが、間違いなく嚥下癖こそがその最大の原因です。
歯は、口の筋肉の力のバランスがとれたところに並びます。
唇や頬の筋肉が外側から押す力に対抗する舌の筋肉の力が顎にきちんととどいていないために、顎が狭くなり歯列不正になるのです。
また、食いしばりの癖、鼻炎や鼻づまりなどの鼻疾患、頭痛や、肩こり、しびれなどの不定愁訴の隠れた原因でもあります。
口は体の中核にありますから、口の筋機能の障害は、当然周辺の鼻や目や耳、体に波及するのです。
人は一日に二千回も嚥下するといわれています。

 次は、見分け方です。

①まず、鏡に向かって唾を飲み込んでみて下さい。唇の端がピクピクッと動いたら、嚥下癖があります。
②そのような人は、舌のふちにフリルのようなガタガタの跡があるはずです。
③さらに、ほっぺたの内側に白く盛り上がった横すじもそうです。
④そして、歯を咬んで飲んでみるといつもと違って飲みづらい感じがします。


正しい嚥下は、歯を軽く合わせて、舌全体を奥まで上顎にぐっと押しつけて、そこだけで封鎖・陰圧を作るのです。真空パックみたい。
封鎖・陰圧が無ければ唾を飲み込むことは出来ません。試しに、口を開いて唾を飲んでみてください。絶対に不可能です。
嚥下運動を間違えて覚えてしまって、舌と上顎だけでの封鎖・陰圧を作れなくて、唇を使ったり、咬まずに上下の歯の隙間を舌でふさいだりして、何とか飲み込もうとするので、①②③のようになるのです。
ただし、お子さんの場合は、まだ瑞々しいですから②や③のような兆候は見られません。

 最大の原因は、離乳の問題ではないかといわれています。
戦後日本に入ってきた、アメリカ式の育児書による離乳食の弊害のようです。
ベビーフードのような物は、自然の哺乳動物の世界にはありません。
おっぱいか、親の食べている食物のどちらかです。
人間も哺乳類です。
母乳を飲む、歯が生えていない赤ちゃんの嚥下と、歯がある子供や大人の嚥下は、全く別な反射運動なのです。
一見合理的なように見える、ドロドロのものから、順に硬くしていく現代の離乳食のせいで、「赤ちゃん嚥下」を引きずってしまった状態が嚥下癖といわれています。
昔の親は、わが子の離乳期・幼児期にどのようにしていたのでしょう。
団塊の世代周辺ぐらいまでは、嚥下癖が少なく、歯列も良かったのです。
昔の伝統的な食生活に戻るのが一番のようです。

 「三つ子の魂百までも」という言葉がそのまま当てはまる「嚥下癖」は、根気が要りますが直すことは可能です。
これまで、歯科医院は虫歯の洪水や、歯周病などの感染症の対策で手一杯でしたが、患者さんの病気の変化に合わせて歯科は変わってきています。
最近の歯科医院の仕事は、このような口の機能の問題の治療も行います。
どんなことでも相談してみてください。         

           天塩の飲み込みが良い人


最後はペンネームです。その広報誌は昨年廃刊になりましたが、僕は記事の内容にに合わせてペンネームを変えていました。

小児科医はなぜこのような育児指導をしたのか?
それは未熟児対策として始まったらしい。それによって乳児死亡率を大幅に低下させることが出来た。
確かに、ライオンは母乳の後はいきなり親が捕ってきた動物の生肉を食う。
だが、弱いライオンの子がいたら、消化出来ずに死ぬかもしれない。
強者だけが残り、弱者は淘汰される。ライオンはそれで良い。
しかし、人間はそれではせつない。だから、より良い離乳法として勧めたのだ。
ベビーフードは良くない口腔習癖”嚥下癖”がついてしまう。これが分からなかった。
そりゃそうだろう。過去には王侯貴族の子どもぐらいしか例の無い、これまでの人類・哺乳類の歴史に無かった壮大な人体実験だったのだろうから。

つまり、弱い子は助かったが、強い子を逆に弱くしてしまったということだ。
これは、日本の最近の子供たちの状態とぴったり符合している。
虫歯は制圧出来たが、歯科医の仕事はまだまだいっぱいあるし、とてつもなく重要だ。


4月のカレンダーは、春霞がたなびく感じをイメージしてみました。
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子供のかみ合わせ | コメント(0) | トラックバック(0) | 2011/04/27 00:00
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