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雪のスウィング干渉花盛り

今年はちょっと近年にない大雪で、患者さんが高齢化して老人歯科となった私のところは、ガラガラに空いている。
私の町は、北海道の北の端の日本海側にあるので、風が強い。
その上、今年は寒気団が張り出してくるので、天気図では低気圧が来ていなくても、衛星写真を見ると日本海にびっちりと筋雲が覆っている。
もう、雪が降ったりやんだりの上に風が強いから、しょっちゅう地吹雪になって、一瞬で目の前が真っ白になる。
この雪と吹雪では、老人はとても出てこれない。

それでも、たまに新患が来るが、それはすべてと言ってよいほど「雪のスウィング干渉」の患者さんだ。
この、雪のスウィング干渉というのは私が一昨年発見した咬合干渉で、要するに、雪かき作業による頭の揺れに伴う上下の歯ぶつかりのことだ。
頭が揺れて、前でも、横でも、斜めでも、その揺れた頭を支えて起こし上げようとあごがスウィングする。
その時に、そちら側の歯が3本以上が同時に頭を支えるような並びなら、歯は痛くならない。
しかし、ほんのわずかの位置の違いによって、1本の歯だけが先に当たるようならば、その繰り返しの打撃によって歯が痛くなる。

雪かきだけではなく、大掃除をしたとか、普段と違う頭が揺れる主に下向きの作業を頑張るとそうなるようだ。
だから、雪が無い季節でもスウィング干渉による歯痛の患者は来る。
それらの患者さんは、歯が痛い。歯医者に行こうかな?と思っているうちに何ともなくなって、また何か月かすると同じ歯が痛くなる。それを繰り返す、という特徴がある。
それは、歯列不正や冠の形態がよくなかったりして、すぐ原因が分かる。
スウィング干渉の咬合調整が必要だ。

ところが、この雪のスウィング干渉というのは、ほとんど問題のない歯列でも起きる。
この前は、きれいな素晴らしい歯列で全くむし歯も無い患者さんが来た。
大雪が降らなければ、決して歯が痛くなることは無かっただろう。
だから、雪のスウィング干渉の患者さんには、説明するだけで終わることが多い。

一昨年に気が付いたわけだが、それはあごろべえ先生の発見したスウィング干渉の知識がなかったら、永遠に分からなかったはずだ。
それ以前にも、冬になると必ずそのような患者さんが来ていたはずなのだが、過去にそのような患者さんにどのように対処していたのか全く想像がつかないし、問題も感じていなかった。
恐ろしいことだ。知識がなければ、あっても見えない。
本州の日本海側の雪国は、今年は例年の6倍の積雪だという。
そこの歯医者は、いったいどうしているのだろう?

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スウィング | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/02/20 11:36

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
昨年は、後半ブログが息切れしてしまった。
今年は、僕たちの会「日本直立歯科医学研究会」の大会が札幌で開催されることになったので、少し気合を入れて頑張ろうと思います。

今回で、札幌開催は3回目になる。最初がいつだったか?どうも思い出せない。2010年ぐらいかな?前回は、2014年だった。
その頃と比べて会は大きく発展して、北海道に仲間が増えた。頼もしい限りだ。
以前は、くまごろう先生と2人で準備したのだけれど、今回はきりっとした仲間が揃っているので、大船に乗ったつもりでいる。
あまり出しゃばらないようにして新しい波に乗りたいと思うけれど、吹き出物のように所かまわない僕が静かにしていられるだろうか?それが不安だ。

北海道直立歯科医学研究会のみなさん。よろしくお願いします。
講演や発表のプログラムもまだまだこれからですが、当たった先生たちはよろしくお願いします。

  第14回 日本直立歯科医学研究大会は、9月22日23日の2日間

  札幌市教育文化会館の講堂(4F)で行われます。


みなさん、予定に入れておいてください。
あれやこれや | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/01/08 18:18

将棋はテクノロジーの世界なので・・・ 永世7冠の言葉

羽生さんが今日、竜王を奪取して永世竜王の資格を得た。
竜王戦は、比較的新しい棋戦で名人戦のような伝統の重みは無いのだが、永世資格(引退後名乗れる名誉称号)を取ることが極めて難しい棋戦である。
普通は、通算5期で永世資格を取れるのだが、連続5期か通算7期というすごいハードルがある。
羽生さんは、6期目の後15年ごしの成就だった。
これで、永世称号を7つ。永世7冠王に成った。
歴史的な瞬間を見ることが出来たのは、将棋ファンとしてとてもうれしい。

今回の竜王戦の前、さすがの羽生さんも年齢による衰えが目立って、僕ら将棋ファンは心配した。
3冠を持っていたのが、王位、王座と連続失冠し、それも相当に有利なところから逆転負けしたりして、竜王戦の挑戦者決定3番勝負もヨレヨレでやっと挑戦者に成れた。
でも僕は、羽生さんが挑戦者に成った時点で、たぶん竜王を取れるだろうと思った。
それは、昨年のスマホ・カンニング疑惑事件という、将棋界を揺るがした騒動の発端の告発者が渡辺竜王で、その告発によって三浦挑戦者をを外して挑戦者を入れ替えるという、あり得ない非常識なことになった。
三浦九段の無実が証明されて、渡辺竜王は大変な逆境に立たされた。その逆風を跳ね返して昨年防衛したのは見事だったが、やはり、このようなことはボディブローとして効いてくるものだ。
元々、疑り深い陰湿な性格なのではなく、少しそそっかしい単純な性格だったので、文春砲と告げ口をする良からぬ人に引っかかってしまっただけだと思うが、あまりにも大事件になって方々に迷惑を掛けて、将棋界の評判を落としてしまった。
だから、今年はずっと不調で五割勝てていなかった。当然だろう。いつも、後悔が頭に圧し掛かっていたはずだ。
この失冠で却ってせいせいして復調出来るのではないか、と思う。
しかし、羽生さんの指し手は、見事だった。特に、今日のインタビューで印象に残る指し手を聞かれて、前局の6六飛を挙げていたが、とてつもない名手で、差された後にプロ棋士が誰も解らず悪手ではないか、という意見だったほどだ。コンピュータの評価値も急落して、ニコ生のコメントは悲鳴で埋まった。コンピュータも解からない手だったわけだ。

終局後の長い共同記者会見の最後の方で、表題の言葉を羽生さんが語った。
羽生さんが記者質問に答えて言った「将棋の本質」という言葉を、もう一度問われて答えた言葉だった。「将棋の世界は長い伝統を持つ世界なのですけど、盤上で起こっているものは、基本的にテクノロジーの世界で日進月歩なので、どんどんどんどん前に進んで行っているのです。だから、過去にこのような手が有ったというようなことはあまり意味がなくて、過去にこういう実績があったとか、ここで勝てたとかは盤上で意味があるのかと言えば、あまり意味がないのです。常にそういう最先端の所を探求していくという気持ちでいます。」

研究者というものは、常にそういうものなのでしょう。だからこそ、第一人者の地位を長く維持している。
あと、記者会見で感じたのは、天皇陛下のような雰囲気があった。
個人の偉業に対して質問されているわけなのに、その答えが将棋界を代表していて、己というものが希薄だ。
「将棋の本質」というものに対する求道者であって、かつ将棋界の発展を希求している。だから、自然に自意識が抜けていくように感じた。
日本の伝統は常に道を求めるわけで、天皇陛下のような無私の人になるのが完成なのだと思う。
ありがたいことだと思う。


あれやこれや | コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/12/05 23:54

歯医者の才能

先日、僕たちの北海道の研究会の集まりがあって、くまごろう先生にくまごろう塾を久しぶりに開講してもらった。
くまごろう先生は大変な名医なので、僕たちの仲間の歯医者が大勢治療を受けている。
その中の一人、敏感先生をモデルにして実習講義をしていただいた。

まず、現在の状態を診査して、体の状態に少し問題があるのを確認する。くまごろう先生が診査して問題を指摘すると、はいそうです、それは自覚していました、と即座に答える。
そして、その原因を作っている歯を診断して、トライボロジーテストのビニールフィルムを咬ませて確認する。その結果処置するわけだ。
被検者の敏感先生は、そのすべての瞬間の自分の体の変化を極めて敏感に感知出来て、その都度明確に表現する。
いま、重心が右前に移動してきて右足の膝上あたりに違和感がある。ビニールを咬んだ瞬間に左に移動して、この辺にあったもやもやが解消した。などと、自分の体の状態を瞬間に指摘する。見事なものだ。
首や肩のはり等も細かく正確な位置を指摘する。そして、顔色も目の表情の変化も極めてくっきりと変化する。
女性の患者さんにはたまにいるタイプだけれど、男でこれほど敏感な人は見たことが無い。
この先生は、歯医者の才能があるな、と感じた。

去年の大会で敏感先生が、その自分の治療体験の発表の最後に、私はこれからすべての患者さんにこれを実践していくつもりです、と宣言した。
その時はとてもおどろいたが、これほど敏感に体が感知できるならば、患者さんの状態も手に取るように分かるはずで、そうならばそうせざるを得ないだろうと理解できた。
いわごろう先生の不思議な治療も、自分の愁訴を治すためのものだった。くまごろう先生も、具合が悪くて、自分で治療して体調をコントロールしている。

よく考えると、僕らの仲間は自分が具合が悪いか、奥さんや子供が具合が悪いかがあって、かみ合わせの勉強に入った人が多い。
そうではなくて、純粋に向学心から勉強している先生もいるが、そういう先生たちの特徴は、ほとんど国立大学卒で、医者を目指して何浪かして仕方なく歯学部に入った人が多い。
ただむし歯を修理するだけじゃつまらなくて、矯正とか咬合とかの難しいことをしなければ気が済まないという特徴がある。
主に、この二種類の先生が僕らの仲間なので、国立大学出の比率が大変高い。

僕の印象では、自分に愁訴のある先生が圧倒的に腕がいい。
理屈じゃなく、体で分かる必要があるのだろう。
だから、女医さんはみんな腕がいい。
僕が、さっぱり腕が上がらないのも、体の感受性が鈍いからだと思う。
この前、いわごろう先生に右ひざの痛みを治していただいたが、そもそも膝に来るのは相当に後の症状で、そんな患者さんは例外なく首も肩もカチカチにこっている。
ところが、その自覚が僕には全くない。これじゃ~ダメだ。

いわくま塾 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/12/01 16:02

三十三間堂の無歯顎の老女像

誘われてシンガポールの学会で発表してきた。
世界中から大学教授や開業医が参加していたが、リゾートを経費で落とすために存在するとしか思えない、ほとんど無意味な学会のようであった。
僕は娘と組んで参加したので楽しかったけれど、国際学会というものは観光業の一種のようだ。
そういうビジネスもあるのだろう。
事前になんとなく気が付いたので、予定を早く切り上げて京都・大阪・奈良に寄ってきた。
京都国立博物館の国宝展と仁徳天皇陵見学が目的。春日大社と興福寺も見てきた。
教科書に載っていた火炎土器や伝源頼朝像の本物を見ることが出来てよかった。肩がとんがった紺色の着物に着物の柄まで細かく書いてあるのに驚いた。教科書の小さな写真しか見ていなかったのでてっきり、べたっと紺色に塗ってあるだけのように思っていた。
博物館のすぐ隣が三十三間堂だったので、高校の修学旅行以来50年ぶりぐらいに行ってきた。

摩和羅女像に吸い込まれてしまった。
無歯顎の老女で、目の表情も白内障か何かでほとんど見えないような感じに見えた。
鎌倉時代だから、無歯顎でも総入れ歯など入れていなかったはずで、そうすると不適合な義歯の動揺によるえぐれるような顎堤吸収もないだろうから、入れ歯を入れていなくても、この程度の少しくぼんだ品の良い口もとになったのだと思う。
魅入られてしまったのは、品格のすごさもあるが、あまりにもリアルなことだ。
顎位は右後ろ下がりの左前顎位のように見えたが、右前顎位かもしれない。右後ろ下がりなので、頭が少し右に傾いているせいで左前顎位に見えるように思う。ほぼ真ん中に近い右前顎位じゃないだろうか?
そして、上体が少し右に傾斜して、右後ろに回旋している。
その回旋した上体と顔が正面を向いた位置に安置してあるので、両足は10度ぐらい左を向いている。
つまり、右後ろ下がりの右前顎位の無歯顎の患者さんの立位姿勢そのものなのだ。
いつも患者さんで観察される傾向がそのままある。
その顎位によって頭が少し右に傾き、その頭のバランスを取るために体をひねって立っている、という患者さんの状態そのものがそこにある。

 この仏像に総入れ歯を入れてあげたい!
そうしたら、きっと真っ直ぐになるだろう。


摩和羅女
ネットで探したら「私の大好きな仏像百選のブログ」というものがあって、その中に写真があった。
ところが、僕が三十三間堂で観察した頭の傾きもなく、体も真っ直ぐに見える。なんか変だ。
よーく観察してみると、本の写真をコピーしたようだが、右手の下の方に写真の縁の線が見える。
仏像が傾いていたので、わざわざ写真を少し回転して起こしてあげたようだ。
僕と同じ気持ちになったのかもしれないけれど、ダメだな~ プロの写真家が彫刻を撮るときに三脚を使わないはずがないじゃないか。
つまらない修正のために、マネキン人形みたいになって仏性を感じられなくなってしまった。
仏様は人間が誓願を立てて修行して成ったものなので、やはり歪みが無いと仏性も感じられない。
神様が日本の神も含めて偶像禁止なのは、神様が歪んでいるはずもなく、やはり完璧すぎると人工的・無機物的で、よく見えないことも関係しているような気がする。
左端の写真がそれで、真ん中が僕が写真の縁のラインに合わせて回転させたものだ。
写真を回転させたのは1°だった。たった1°で印象が全く異なる。この1°の傾きが仏師の腕なのだ。見事なものだ。

これは、どんなに天才仏師でもモデル無しに作ることは無理だろうと思う。
この前、運慶展で見てきた無著像は、田中英道先生によれば西行がモデルではないか、ということだ。
このモデルは尼僧に違いないと思うが、ただものではないすごい尼さんであることは間違いない。
表情に現れた信仰に対する確信と覚悟のすごさ!唯物史観に毒された現代人には、絶対に見ることのできない表情だと思う。
それにしても、総入れ歯を入れてあげたいものだ。
入れ歯とのくらし | コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/11/21 17:45
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